kaninome’s diary

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はさみうちの定理(関数)

 こんにちは!蟹の目です。
今回は関数の極限におけるはさみうちの定理と他いくつかの式について示したいと思います。例によって|l|を避けるため文字をlと変えて示したいと思います。
(文字なんて正直なんでもいいですからね…)

今回の話題

  1. f(x)≦h(x)≦g(x), f(x)→p (x→a), g(x)→p (x→a)
    ⇒h(x)→p (x→a)
  2. f(x)≦g(x), f(x)→∞ (x→a)⇒g(x)→∞ (x→a)
  3. f(x)→∞ (x→a)⇒1/f(x)→0 (x→a)
  4. f(x)→0 (x→a)⇒|1/f(x)|→∞ (x→a)

 

 

1. f(x)≦h(x)≦g(x), f(x)→p (x→a), g(x)→p (x→a)
  ⇒h(x)→p (x→a)

それでは、はさみうちの定理について証明していきましょう。

 f(x)≦h(x)≦g(x), f(x)→p (x→a), g(x)→p (x→a)となる
関数f(x),g(x),h(x)を考える

 ε>0をとる
δ1>0[0<|x-a|<δ1⇒|f(x)-p|<ε]
δ2>0[0<|x-a|<δ2⇒|g(x)-p|<ε]
δ0=min(δ12)とすると

 0<|x-a|<δ0のとき
p-ε<f(x)≦h(x)≦g(x)<p+ε
これはh(x)→p (x→a)を示す ◾️

 

 

2. f(x)≦g(x), f(x)→∞ (x→a)⇒g(x)→∞ (x→a)

 これは、私が追い出しの定理と呼んでいる定理です。
数列のときも証明しましたね。

f(x)≦g(x), f(x)→∞ (x→a)となる
関数f(x),g(x)を考える

 M>0をとる
仮定から
δ0>0[0<|x-a|<δ0⇒f(x)>M]

 0<|x-a|<δ0のとき
M<f(x)≦g(x)

これはg(x)→∞ (x→a)を示す ◾️

 当然これと同じような証明で
f(x)≧g(x), f(x)→-∞ (x→a)⇒g(x)→-∞ (x→a)もいえます。

 

 

 

3. f(x)→∞ (x→a)⇒1/f(x)→0 (x→a)

 これも言われればそれはそうでしょ、と思うような式ですが、
ε-δ論法で示してみようと思います。

 ε>0をとる
仮定から
δ0>0[0<|x-a|<δ0⇒f(x)>1/ε]

 0<|x-a|<δ0のとき
 |1/f(x)-0|
=1/|f(x)|
<1/(1/ε)=ε

これは1/f(x)→0 (x→a)を示す ◾️

 みなさん気がついていると思いますが
f(x)→-∞ (x→a)⇒1/f(x)→0 (x→a)も成り立ちます

 ここではあえて示しませんが、どうしても納得のいかない方は上と同じ方法で示してみてください。

 

 

 

4. f(x)→0 (x→a)⇒|1/f(x)|→∞ (x→a)

 M>0をとる
仮定から
δ0>0[0<|x-a|<δ0⇒|f(x)|<1/M]

 0<|x-a|<δ0のとき
|1/f(x)|>1/(1/M)=M

 f(x)>0のとき
f(x)>M
 f(x)<0のとき
f(x)<-M

よってf(x)>0でf(x)→∞ (x→a), f(x)<0でf(x)→-∞ (x→a)
まとめると、|1/f(x)|→∞ (x→a) ◾️

 

 

 今回の証明はどうだったでしょうか?
数列の極限のときのε-δ版なので、数列のときに理解できた方にとっては今回は簡単に感じたかもしれません。
 今回までに示した定理などは今後極限を求めるときなどに当たり前のように使用します。今後難しくなる前に理解できるように頑張りましょう。

また次回!!!

関数の極限の基本性質

 こんにちは!蟹の目です。
 今回は関数の極限の定理となるいくつかの式について示していきたいと思います。
数列の極限のときはε-N論法を使って定理を示しましたが、今回は関数の極限なので、ε-δ論法で示していきたいと思います。

 |l|←絶対値lを避けるために今回はl,mの代わりにp,qを使用します。

今回の話題

  1. f(x)→p(x→a)⇔f(x)→p(x→a+0)かつf(x)→p(x→a-0)
  2. f(x)→p(x→a), g(x)→q(x→a)とするとき
    (ⅰ){f(x)+g(x)}→p+q (x→a)
    (ⅱ){f(x)g(x)}→pq (x→a) , 特にkf(x)→kp(x→a)(kは定数)
    (ⅲ){f(x)/g(x)}→p/q (x→a)
    (ⅳ)f(x)≦g(x)⇒p≦q

 

1. f(x)→p(x→a)⇔f(x)→p(x→a+0)かつf(x)→p(x→a-0)

(十分条件)

 ε>0をとると、仮定から
δ0>0[0<|x-a|<δ0⇒|f(x)-p|<ε]

 0<x-a<δ0のとき
|f(x)-p|<ε
これはf(x)→p (x→a+0)を示す

 0<a-x<δ0のとき
|f(x)-p|<ε
これはf(x)→p (x→a-0)を示す

(必要条件)

 ε>0をとると、仮定から
δ1>0[0<x-a<δ1⇒|f(x)-p|<ε]
δ2>0[0<a-x<δ2⇒|f(x)-p|<ε]
δ0=min(δ12)(>0)をとると(δ0はδ1とδ2の小さい方)

 0<|x-a|<δ0のとき
|f(x)-p|<ε
これはf(x)→p(x→a)を示す ◾️

 

 

2. f(x)→p(x→a), g(x)→q(x→a)とするとき

(ⅰ){f(x)+g(x)}→l+m (x→a)

 ∀ε>0をとると、仮定から
δ1>0[0<|x-a|<δ1⇒|f(x)-p|<ε/2]
δ2>0[0<|x-a|<δ2⇒|g(x)-q|<ε/2]
δ0=min(δ12)(>0)をとる

 0<|x-a|<δ0のとき
   |{f(x)+g(x)}-(p+q)|
=|{f(x)-p}+{g(x)-q}|
≦|f(x)-p|+|g(x)-q| (∵三角不等式)
<ε/2+ε/2=ε

よって{f(x)+g(x)}→p+q (x→a) ◾️

 足し算がいえるのなら引き算の場合もいえますよね。
{f(x)±g(x)}→l±m (x→a) ということです。

 

 

(ⅱ){f(x)g(x)}→pq (x→a), 特にkf(x)→kp(x→a)(kは定数)

 ∀ε>0をとると、仮定から
δ1>0[0<|x-a|<δ1⇒|f(x)-p|<ε]
δ2>0[0<|x-a|<δ2⇒|g(x)-q|<ε]

 また、 q-ε<g(x)<q+εであるから
g(x)≦MとなるM>0が 0<|x-a|<δ2で存在する

∃δ3>0[0<|x-a|<δ3⇒|g(x)-q|<ε/2(M+|p|)]
δ1'>0[0<|x-a|<δ1'⇒|f(x)-p|<ε/2(M+|p|)]

δ0=min(δ1',δ3)(>0)をとる

 0<|x-a|<δ0のとき
   |f(x)g(x)-pq|
=|g(x){f(x)-p}+l{g(x)-q}|
≦|g(x)||f(x)-p|+|p||g(x)-q| (∵三角不等式)
≦M|f(x)-p|+|p||g(x)-q|
<(M+|p|)(|f(x)-p|+|g(x)-q|)
<ε/2+ε/2=ε

よって{f(x)g(x)}→pq (x→a) ◾️

一方、k=0のときkf(x)→0=kp (x→a)は明らかに成り立つ

また、δ1>0[0<|x-a|<δ1⇒|f(x)-p|<ε/|k|]であるから

   |kf(x)-kp|
=|k||f(x)-p|

よってkf(x)→kp(x→a)(kは定数) ◾️

 

 

(ⅲ){f(x)/g(x)}→p/q (x→a) (q≠0)

 今回もまず、f(x)→p (x→a)⇒1/f(x)→1/p (x→a)を示しましょう。

(ⅲ)' f(x)→p (x→a)⇒1/f(x)→1/p (x→a)

 ∀ε>0をとると仮定から
δ0>0[0<|x-a|<δ0⇒|f(x)-p|<ε|p|2/(1+ε|p|)]
p-ε|p|2/(1+ε|p|)<f(x)<p+ε|p|2/(1+ε|p|)
よって0<|p|-ε|p|2/(1+ε|p|)<|f(x)|<|p|+ε|p|2/(1+ε|p|)

 0<|x-a|<δ0のとき
|1/f(x)-1/p|
=|f(x)-p|/|f(x)p|
<|f(x)-p|/|p||{|p|-ε|p|2/(1+ε|p|)}=ε

よってf(x)→p (x→a)⇒1/f(x)→1/p (x→a) ◾️

 (ⅱ),(ⅲ)'から
1/g(x)→1/q (x→a)であり

   f(x)/g(x) (x→a)
=f(x)*{1/g(x)}
→p*(1/q)=p/q ◾️

 

 

(ⅳ)f(x)≦g(x)⇒p≦q

今回はpとqの中点(p+q)/2を考え、背理法で示します。

f(x)≦g(x)である関数f(x),g(x)を考える
ここで、p>qと仮定すると

δ1>0[0<|x-a|<δ1⇒|f(x)-p|<(p-q)/2]
δ2>0[0<|x-a|<δ2⇒|g(x)-q|<(p-q)/2]

 δ0=min(δ12)とすると
0<|x-a|<δ0のとき
q-(p-q)/2<g(x)<q+(p-q)/2=p-(p-q)/2<f(x)<p+(p-q)/2から
g(x)<f(x)

 これはf(x)≦g(x)に矛盾
よってf(x)≦g(x)⇒p≦q ◾️

 

 今回の定理はどうだったでしょうか?
数列のときと似ていますが、δになると分かりにくくも感じますよね。
今回証明した定理はどれも今後問題を解く上で必要になります。定理を理解し、使いこなせるようになりましょう。

また次回!!!

関数の極限

 こんにちは!蟹の目です。
今回から関数の極限について書いていこうと思います。
 数列のときと同じく、数学的に関数の極限について示していきたいと思います。
関数の極限は数列の極限と似ている部分があるので、数列の極限を理解した方なら問題ないと思います。

 

今回の話題

  1. 関数の極限値の定義
  2. 片側極限
  3. 関数の発散

 

 

 

1.関数の極限の定義

 みなさん、高校のときに関数の極限をどう学びましたか?
数列のときと同様、
関数f(x)がx=aで極限値lをとるとは、xが限りなくaに近づくとき、f(x)が限りなくlに近づくと習ったと思います。
 やはり、この限りなくというのは大学数学ではふさわしくありません。そこで、ここでは数列のときに使ったε-N論法によく似た
 ε-δ論法を使います。(δはデルタと読みます。)

 

まず、定義から示していきましょう!
f(x)のx=aにおける極限値がlとは

 ε>0に対して、δ>0が存在して次が成り立つ
 0<|x-a|<δとなるすべてのxに対して|f(x)-l|<ε

数学記号だけで次のようにも表します。
ε>0, δ>0; ∀x∈R[0<|x-a|<δ⇒|f(x)-l|<ε]

 これを一目見てもなんのことかわからないでしょう。
これはlとの差が任意の正の数εより小さくなるf(x)を満たすxとaの距離の差がδより小さくなるようなδが存在すれば良い、という意味です。

今回は図を使って関数の極限値を見ていきたいと思います。

このような関数f(x)について考えます

このようにεをとります

 εは任意の正の数なので限りなく0に近いとても小さな数もとり得ます。
εがどんなに小さくてもxの値がaに近い場所でδが存在するときf(x)がx=aでlに収束するのです。
 εを小さくすれば、上の図ではδも小さくなりますが、ε≠0であるからδはaの近くに必ず存在しますよね。これがf(x)のx=aでの極限値がlであることを定義しているのです。
 このとき、極限値がf(a)でないことに注意してください。もちろん、f(a)が極限値になることもありますが、それは別の機会に書きます。
今回の場合は、極限値をf(a)とするとεを小さくとったときに、aの近くにδが存在しませんよね。
 極限値はあくまでもどの地点に近づくかを考えるものであってx=aでの極限を考えるからといってf(a)の値そのものには一切関係ないのです。
つまり、x=aが定義されていなくても良いのです。

 

 

2. 片側極限

 xをaに右から(値の大きいほうから)近づけたとき、f(x)が限りなくlに近づくとき、f(x)のx=aにおける極限値はlであるという。
f(x)→l (x→a+0)で表す。 a=0のときは単に(x→+0)と表す。

 逆に、aに左から(値の小さいほうから)近づけたとき、f(x)が限りなくlに近づくとき、f(x)のx=aにおける極限値はlであるという。
f(x)→l (x→a-0)で表す。 a=0のときは単に(x→-0)と表す。

 

 

3. 関数の発散

 関数の発散も数列の発散と似ています。
M>0, δ>0; x∈R[0<|x-a|<δ⇒f(x)>M]
これがf(x)がx=aで正の無限大に発散することの定義になります。

 つまり、0<|x-a|<δとなるすべてのxに対してf(x)>Mが成り立つようなδがあるとき、その関数f(x)はx=aで正の無限大に発散するといいます。
f(x)→∞ (x→a)

 逆に、M>0, δ>0; x∈R[0<|x-a|<δ⇒f(x)<-M]
が成り立つとき、関数f(x)はx=aで負の無限大に発散するという。
f(x)→-∞ (x→a)

 

 

 関数の極限はどうでしょうか?
数列のときと同じようなことを言っているのに、δが出てきて何を言っているのかわかりにくくなったことと思います。
残念ながら、今後関数の極限を考えるときはこのε-δ論法を使っていきます。

数列のときのn0がδに変わったような感じですので、なんとか一緒にここを乗り越えていきましょう。次回からは関数の極限の性質や定理を示していきますので、問題によって慣れていきましょう。

また次回!!!

数列の極限(問題)

 こんにちは!蟹の目です。
今回は今まで示したことを踏まえた上で、問題をいくつか解いていきたいと思います。
今回の問題も例によって示せ中心になっていますので、頑張っていきましょう。

 

今回の問題

  1. a>0のときn√a→1(n→∞)を示せ

  2. a>0のときan/n!→0(n→∞)を示せ

  3. {(1+1/n)n}が収束することを示せ

 

1. a>0のときn√a→1(n→∞)を示せ

(ⅰ)a>1のとき
 a=1+h, h>0とおくと
 1<n√a=n√(1+h)≦1+h/n (∵二項定理)
(1+h/n)→1 (n→∞)であるからはさみうちの定理より
n√a→1(n→∞)

(ⅱ)a=1のとき
 n√1=1から
n√a→1(n→∞)は明らか

(ⅲ)0<a<1のとき
 b=1/aとおくと
b>1であるから(ⅰ)から
n√a=1/n√b→1 (n→∞) ◾️

 

2. a>0のときan/n!→0(n→∞)を示せ

(ⅰ)0<a≦1のとき
 0<an/n!≦1/n!となり
1/n!→0(n→∞)であるから、はさみうちの定理より
an/n!→0(n→∞)

(ⅱ)a>1のとき
 m≦a<m+1である自然数mをとり、r=a/(m+1) (<1)とおく
また!=am/m!=Mとおくと

 n≧m+1のとき
   an/n!
=(a*a*…*a*a*…*a)/{n*(n-1)*…*(m+1)*m*…*1}
=[(a*a*…*a)/{n*(n-1)*…*(m+1)] * [(a*a*…*a)/{m*(m-1)*…*1}]
≦Mrn-m→0(n→∞)
0≦an/n!は明らかなので、はさみうちの定理から
 an/n!→0 (n→∞) ◾️

 

 

3. {(1+1/n)n}が収束することを示せ

 an=(1+1/n)nとすると二項定理より
 an
=1+n(1/n)+{nC2*(1/n)2}+…+nCn*(1/n)n
=1+n(1/n)+{n(n-1)/2!*n2}+…+n!/n!*(1/n)n
=1+n(1/n)+{n(n-1)/2!*n2}+…+(1/n!)(n/n){(n-1)/n}…(2/n)(1/n)
=1+1+(1-1/n)/2+…+(1/n!)(1-1/n)(1-2/n)…{1-(n-1)/n}
≦1+1+(1/2){1-1/(n+1)}+(1/n!){1-1/(n+1)}{1-2/(n+1)}…{1-(n-1)/(n+1)}
   +{1/(n+1)!}{1-1/(n+1)}{1-2/(n+1)}…{1-n/(n+1)}
=an+1

よって数列{an}は増加数列である

 一方、
0<an
 ≦1+1+1/2+…+1/2n-1 (∵1/n!≦1/2n-1)
 =1+{1-(1/2)n}/(1-1/2) (∵等比数列の和)
 <3

 これは数列{an}が上に有界であることを意味する
以前示した通り上に有界である増加数列は収束するので、
{(1+1/n)n}は収束する ◾️

 余談ですが、この(1+1/n)n→e (n→∞)とeが定義され、このeはネイピア数と呼ばれています(自然対数の底にもなっていますね)。上の証明から2<e<3であることがわかりますね。
今後学ぶであろうテイラーの定理によってeが無理数であること、eの近似値が計算できます。(e=2.718281828…)
 詳しくはここでは紹介しませんが、eというものがあることは覚えておくと良いと思います。

 

 

 今回の問題はどうだったでしょうか?
記号や文字ばっかりで分かりにくい場合は紙などに書いてみてください。
難しい数式が書かれていないことがわかると思います(^^)。

また、今回、二項定理やはさみうちの定理を使用しましたね、今後もこういった定理を問題ないで使用しますので、そちらも理解するようがんばりましょう!

また次回!!!

(追記5月10日:3問目の解答で、増加数列であることを示す過程での式の変形を省略したことで分かりにくくなっていた部分を詳細部分を増やし、分かりやすくなるよう途中家庭を追加しました。)

はさみうちの定理(数列)

 こんにちは!蟹の目です。
今回は数列の極限の続きで、はさみうちの定理について書いていきたいと思います。
他に2つ、示しておきたい式についてもあわせて紹介しますので、一緒に頑張っていきましょう!

今回の話題

  1. はさみうちの定理
  2. 追い出しの定理
  3. 発散する数列の逆数

 

 

1.はさみうちの定理

 まず、今回の主題であるはさみうちの定理について書いていこうと思います。
 an→a(n→∞), bn→a(n→∞)
    an≦cn≦bn
である数列{an},{bn},{cn}について考えます。
 このとき、次が成り立つことをはさみうちの定理といいます。
cn→a(n→∞)

 

 それでは、これを示していきましょう!

 ε>0をとると、仮定から
n1∈N[n≧n1⇒|an-a|<ε]
n2∈N[n≧n2⇒|bn-a|<ε]

 よって、n0=max{n1,n2}とすると、
n≧n0のとき
a-ε<an≦cn≦bn<a+ε
これはcn→a(n→∞)を示す ◾️

 

 

 

2. 追い出しの定理

 これから紹介する定理は、はさみうちの定理の延長にあるような定理です。
私が勝手にその性質から"追い出しの定理"と名づけているだけなので、名前は気にしないでください。

 ではその定理とはどういうものか説明したいと思います。
an→∞(n→∞),  an≦bn
 である数列{an},{bn}があるとき、
次の式が成り立つことを追い出しの定理と呼んでいます。
bn→∞(n→∞)

 

 それでは、これを示していきましょう!

 M>0をとると仮定から、
n0∈N[n≧n0⇒an>M]
 n≧n0のとき、
M<an≦bn

これはbn→∞(n→∞)を示す ◾️

 

 

 

3. 発散する数列の逆数

 これから、今までも当たり前のように使ってきたことを数学的に正しいと示したいと思います。それは次の式です。
an→∞(n→∞)⇒1/an→∞(n→∞)

 みなさん、1/nがnを無限大に近づけると0に収束することは知ってますよね?
これから、1/nに限らず、正の無限大に発散する数列の逆数をとった数列は0に収束することを示します!

 an→∞(n→∞)である数列{an}について考えます。
 ここで、ε>0をとると、仮定から
n0∈N[n≧n0⇒an>1/ε]
n≧n0のとき
0<(1/an)<ε
 これは|(1/an)-0|<εを満たし、すなわち
1/an→0(n→∞)を示している。 ◾️

 

 今回はこれら3つの定理について示したところで終わりにしたいと思います。
今後、数列の極限への証明問題などで今回示した定理はよく使えます。
当たり前じゃん!と思ってもらって構いません、上の定理が成り立つことだけでも覚えておいてください。次回から定理を使った問題なんかも解いていこうと思いますので、数列の極限をしっかり理解していきましょう。

また次回!!!

数列の極限の基本性質

 こんにちは!蟹の目です。
今回は極限の基本性質、俗に定理と呼ばれる4つの式について書いていきたいと思います。

 今回登場する数列{an}と{bn}はそれぞれ
an→a (n→∞)
bn→b (n→∞)
であるとします。

 

今回の話題

  1. an+bn→a+b(n→∞)
  2. anbn→ab(n→∞)、kan→ka(n→∞)( kは定数)
  3. an/bn→a/b (n→∞)bn,b≠0)
  4. an≦bn⇒a≦b

 ε-N論法の定義に則って定理を示していくので、基本的にまずεを用意し、最終的に定義の形になるように証明を進めていきます。それをわかった上で始めていきましょう!

 

1. an+bn→a+b(n→∞)

 ε>0をとる
 仮定からn1∈N[n≧n1⇒|an-a|<ε/2]
  およびn2∈N[n≧n2⇒|bn-b|<ε/2]

 ここで、n0=max(n1,n2)  (n0はn1とn2の大きい方)
を定めると、
 n≧n0のとき
   |(an+bn)-(a+b)|
 =|(an-a)+(bn-b)|
≦|an-a|+|bn-b| (∵三角不等式)
<ε/2+ε/2=ε
数列の極限の定義から
an+bn→a+b(n→∞) ◾️

 また、和が成り立つのなら差でも同じようになるのが分かりますか?
つまり、an±bn→a±b(n→∞)です。

 

2. anbn→ab(n→∞)特に、kan→ka(n→∞) (kは定数)

 前に示した通り、収束する数列は有界であるから
仮定から、M>0[|bn|≦M (n=1,2,…)]である

ここでε>0をとると、an→a(n→∞),bn→b(n→∞)から
n1∈N[n≧n1⇒|an-a|<ε/2(M+|a|)]••①
n2∈N[n≧n2⇒|bn-b|<ε/2(M+|a|)]••②
ここで、n0=max(n1,n2)とすると
n≧n0のとき
  |anbn-ab|
=|(an-a)bn+a(bn-b)|
≦|an-a||bn|+|a||bn-b| (∵三角不等式)
≦M|an-a|+|a||bn-b|
(M+|a|){|an-a|+|bn-b|}
①,②から
<ε/2+ε/2=ε
よって数列の極限の定義から
anbn→ab(n→∞) 

また、ε>0,kを定数(k≠0)ととると
仮定から、n3∈N[n≧n3⇒|an-a|<ε/|k|]
n≧n3のとき
  |kan-ka|
=|k||an-a|
<|k|*(ε/|k|)=ε
一方、k=0のときは明らかに
kan=ka=0であるから
kan→ka(n→∞) ◾️

 

3. an/bn→a/b(n→∞) (bn,b≠0)

これを示すために、まず1/an→1/a(n→∞)(ただしan≠0)を示す。

3'. 1/an→1/a(n→∞)(ただしan≠0)

 ここでε>0をとると、仮定から次式が成り立つ。
n0∈N[n≧n0⇒|an-a|<ε|a|2/(1+ε|a|)]

0<|a|-{ε|a|2/(1+ε|a|)}<|an|<|a|+ε|a|2/(1+ε|a|)
n≧n0のとき

  |(1/an)-(1/a)|
=|an-a|/(|a||an|)
≦|an-a|/|a|[|a|-{ε|a|2/(1+ε|a|)}]

よって1/an→1/a(n→∞) ◾️

上の証明から、1/bn→1/b(n→∞)が成り立つ。

 この事実と、2の定理から
  an/bn(n→∞)
=an*(1/bn)(n→∞)
→a*(1/b)
=a/b ◾️

 

 

4. an≦bn⇒a≦b

 ∀ε>0をとる
また、仮定から
n1∈N[n≧n1⇒|an-a|<ε/2],
n2∈N[n≧n2⇒|bn-b|<ε/2]

が成り立つ。

ここで、n0=max(n1,n2)とすると
n≧n0のとき
  b-a
≧(b-a)+(bn-an)
=(bn-b)-(an-a)
>-(ε/2)-(ε/2)=-ε

 よって
b-a≧0すなわちa≦b ◾️

 ちなみに、an<bnのときもa≦bになり等号がつきます
これは、an=-(1/n), bn=1/nからも確認できます。
(このときan<bn常に成り立ちますが、極限値はどちらも0になります。)

 

〜おまけ〜

 背理法によってan≦bn⇒a≦bを示す。

an≦bnとなる数列{an},{bn}を考える。
ここで、a>bと仮定する
また、もとの仮定から
n1∈N[n≧n1⇒|an-a|<(a-b)/2]
n2∈N[n≧n2⇒|bn-b|<(a-b)/2]である
(以前極限の一意性を示したとき同様、aとbの中点を考えています。
 a-(a-b)/2=b+(a-b)/2=(a+b)/2=(aとbの中点))

 n0=max(n1,n2)とおき、
n≧n0のとき
b-(a-b)/2<bn<b+(a-b)/2=(a+b)/2=a-(a-b)/2<an<a+(a-b)/2
bn<(a+b)/2<an
これはan≦bnに矛盾

よってan≦bn⇒a≦b ◾️

 

 今回の内容はどうだったでしょうか?
これまで問題を解くときに当たり前のように使っていた定理をε-N論法という数学的な定義に基づいて証明しました。文字ばっかりでわかりづらい、絶対値出てきすぎ、など不満は多々あるでしょうが、どんな数列の極限にも成り立つ定理ですので、乗り切ってもらえればと思います。

 数列の極限を始めてから定義づけだったりで理解に苦しむところもあるかもしれませんが、今回のような証明や、今後行う問題で徐々に理解していきましょう。

また次回!!!

(追記5月9日:おまけとして4つ目の式を背理法を用いた証明を記した。)

数列の極限の性質

 こんにちは!蟹の目です。
今回は数列の極限のいくつかの性質について書いていこうと思います。
 直感的にわかることもあると思いますので、そりゃそうだな、と思って見てみてください。
数列の極限の定義はε-N論法を使用しますので、そちらがまだわかっていない方は是非前の記事を参照して下さい。

数列の極限 - kaninome’s diary

 

今回の話題

  1. 収束する数列は有界
  2. 上に有界な増加数列は収束する
  3. 極限の一意性

 

収束する数列は有界

 みなさん数列の収束と有界の定義についてそれぞれ覚えていますか?

ここでは、収束する数列全体の集合が有界であることを示していきたいと思います。

aに収束する数列{an}について考えていきましょう。
 数列anは仮定より収束するので、

an→a (n→∞)であり、

ε>0,  n0∈N [n≧n0⇒|an-a|<ε] (∵定義)です

εは任意の正の数なので次も成り立ちます。

n1∈N [n≧n1⇒|an-a|<1]

このとき、
an<a+1 (n≧n1)となりますね

ここでn1-1番目までの数列anの個数について考えてみて下さい。
n1がどれほど大きい数かは分かりませんが、何かしらの自然数であることに間違いありません。
つまり、数列anの1からn1-1番目までの個数は有限個なのです。
すなわち、数列anの1からn1-1番目までの値をすべて比べれば必ず最大のものと、最小のものが存在します。
無限個なければ値が無限に大きくなったりしませんよね^o^

 以上のことから、n1-1番目までのanの最大値とa+1の両方よりも値の大きい実数が存在し、n1-1番目までのanの最小値とa+1の両方よりも値の小さい実数が存在します。

 これはそれぞれ、数列{an}の上界と下界を意味してますよね。
だから、収束する数列は有界なのです。 ◾️

 

 

上に有界な増加数列は収束する

 次に、上に有界な増加数列は収束することを示してみましょう。

{an}を上に有界増加数列とします。
このとき実数の連続性から
集合{a1, a2, …an}には上限が存在します。
それをbとでもおきましょう。

 任意の正の数εに対して、b-εは{an}の上界ではありません。

よって、b-ε<an0となるn0が存在します。

また、bは{an}の上界なので、
an≦b<b+εが成り立ちます。

以上のことから

 b-ε<an0<an(n>n0)<b+ε
⇔|an-b|<ε (n≧n0)
(∵|an-a|<ε⇔a-ε<an<a+ε)
an→b (n→∞) (収束する) ◾️

逆に、下に有界な減少数列も収束することもわかりますね。

 

 

 

極限の一意性

 数列{an}について考える
an→a (n→∞)
an→b (n→∞)
となるa<bがあるとする
つまり、数列{an}がaにもbにも収束するとする。

 このとき、次のことが定義からわかる。

  • ε1>0, n1∈N[n≧n1⇒|an-a|<ε1]
  • ε2>0, n2∈N[n≧n2⇒|an-b|<ε2]

ここで、さらに次のことも成り立つ。

  1. n1'∈N
    [n≧n1'⇒|an-a|<{(a+b)/2}-a=(b-a)/2]
  2. n2'∈N
    [n≧n2'⇒|an-b|<b-{(a+b)/2}=(b-a)/2]

 (a+b)/2はaとbの中点です。
また、(b-a)/2はa,bそれぞれからの中点までの距離です。

 ここで、n0≧n1’かつn0≧n2’となるn0について考えてみましょう。

 1の式から
an0<(a+b)/2が成り立ちます。

 2の式から
an0>(a+b)/2が成り立ちます。

 2式をまとめると
an0<(a+b)/2<an0
となり、式に矛盾が生じます。
つまり、数列{an}は2つの異なる数には収束せず、極限には一意性があります
(∵背理法) ◾️

 

 今回の話はどうだったでしょうか?
極限に有界に、今までやったことをわかっていないと難しかったと思います。
今回示したことは、直感的にわかるところもあり、わざわざ示さなくてもよかったかもしれません。
 ただ、数学的に上のことが正しいといえることも大事なんだ、と思っていて下さい。今後もこういった直感的にわかるようなことも数学的に示していきますので、頑張っていきましょう。

また次回!!!