数列の極限の基本性質
こんにちは!蟹の目です。
今回は極限の基本性質、俗に定理と呼ばれる4つの式について書いていきたいと思います。
今回登場する数列{an}と{bn}はそれぞれ
an→a (n→∞)
bn→b (n→∞)
であるとします。
今回の話題
ε-N論法の定義に則って定理を示していくので、基本的にまずεを用意し、最終的に定義の形になるように証明を進めていきます。それをわかった上で始めていきましょう!
1. an+bn→a+b(n→∞)
∀ε>0をとる
仮定から∃n1∈N[n≧n1⇒|an-a|<ε/2]
および∃n2∈N[n≧n2⇒|bn-b|<ε/2]
ここで、n0=max(n1,n2) (n0はn1とn2の大きい方)
を定めると、
n≧n0のとき
|(an+bn)-(a+b)|
=|(an-a)+(bn-b)|
≦|an-a|+|bn-b| (∵三角不等式)
<ε/2+ε/2=ε
数列の極限の定義から
an+bn→a+b(n→∞) ◾️
また、和が成り立つのなら差でも同じようになるのが分かりますか?
つまり、an±bn→a±b(n→∞)です。
2. anbn→ab(n→∞)特に、kan→ka(n→∞) (kは定数)
前に示した通り、収束する数列は有界であるから
仮定から、∃M>0[|bn|≦M (n=1,2,…)]である
ここで∀ε>0をとると、an→a(n→∞),bn→b(n→∞)から
∃n1∈N[n≧n1⇒|an-a|<ε/2(M+|a|)]••①
∃n2∈N[n≧n2⇒|bn-b|<ε/2(M+|a|)]••②
ここで、n0=max(n1,n2)とすると
n≧n0のとき
|anbn-ab|
=|(an-a)bn+a(bn-b)|
≦|an-a||bn|+|a||bn-b| (∵三角不等式)
≦M|an-a|+|a||bn-b|
≦(M+|a|){|an-a|+|bn-b|}
①,②から
<ε/2+ε/2=ε
よって数列の極限の定義から
anbn→ab(n→∞)
また、∀ε>0,kを定数(k≠0)ととると
仮定から、∃n3∈N[n≧n3⇒|an-a|<ε/|k|]
n≧n3のとき
|kan-ka|
=|k||an-a|
<|k|*(ε/|k|)=ε
一方、k=0のときは明らかに
kan=ka=0であるから
kan→ka(n→∞) ◾️
3. an/bn→a/b(n→∞) (bn,b≠0)
これを示すために、まず1/an→1/a(n→∞)(ただしan≠0)を示す。
3'. 1/an→1/a(n→∞)(ただしan≠0)
ここで∀ε>0をとると、仮定から次式が成り立つ。
∃n0∈N[n≧n0⇒|an-a|<ε|a|2/(1+ε|a|)]
0<|a|-{ε|a|2/(1+ε|a|)}<|an|<|a|+ε|a|2/(1+ε|a|)
n≧n0のとき
|(1/an)-(1/a)|
=|an-a|/(|a||an|)
≦|an-a|/|a|[|a|-{ε|a|2/(1+ε|a|)}]
<ε
よって1/an→1/a(n→∞) ◾️
上の証明から、1/bn→1/b(n→∞)が成り立つ。
この事実と、2の定理から
an/bn(n→∞)
=an*(1/bn)(n→∞)
→a*(1/b)
=a/b ◾️
4. an≦bn⇒a≦b
∀ε>0をとる
また、仮定から
∃n1∈N[n≧n1⇒|an-a|<ε/2],
∃n2∈N[n≧n2⇒|bn-b|<ε/2]
が成り立つ。
ここで、n0=max(n1,n2)とすると
n≧n0のとき
b-a
≧(b-a)+(bn-an)
=(bn-b)-(an-a)
>-(ε/2)-(ε/2)=-ε
よって
b-a≧0すなわちa≦b ◾️
ちなみに、an<bnのときもa≦bになり等号がつきます。
これは、an=-(1/n), bn=1/nからも確認できます。
(このときan<bnは常に成り立ちますが、極限値はどちらも0になります。)
〜おまけ〜
背理法によってan≦bn⇒a≦bを示す。
an≦bnとなる数列{an},{bn}を考える。
ここで、a>bと仮定する
また、もとの仮定から
∃n1∈N[n≧n1⇒|an-a|<(a-b)/2]
∃n2∈N[n≧n2⇒|bn-b|<(a-b)/2]である
(以前極限の一意性を示したとき同様、aとbの中点を考えています。
a-(a-b)/2=b+(a-b)/2=(a+b)/2=(aとbの中点))
n0=max(n1,n2)とおき、
n≧n0のとき
b-(a-b)/2<bn<b+(a-b)/2=(a+b)/2=a-(a-b)/2<an<a+(a-b)/2
bn<(a+b)/2<an
これはan≦bnに矛盾
よってan≦bn⇒a≦b ◾️
今回の内容はどうだったでしょうか?
これまで問題を解くときに当たり前のように使っていた定理をε-N論法という数学的な定義に基づいて証明しました。文字ばっかりでわかりづらい、絶対値出てきすぎ、など不満は多々あるでしょうが、どんな数列の極限にも成り立つ定理ですので、乗り切ってもらえればと思います。
数列の極限を始めてから定義づけだったりで理解に苦しむところもあるかもしれませんが、今回のような証明や、今後行う問題で徐々に理解していきましょう。
また次回!!!
(追記5月9日:おまけとして4つ目の式を背理法を用いた証明を記した。)