数列の極限の性質
こんにちは!蟹の目です。
今回は数列の極限のいくつかの性質について書いていこうと思います。
直感的にわかることもあると思いますので、そりゃそうだな、と思って見てみてください。
数列の極限の定義はε-N論法を使用しますので、そちらがまだわかっていない方は是非前の記事を参照して下さい。
今回の話題
収束する数列は有界
みなさん数列の収束と有界の定義についてそれぞれ覚えていますか?
ここでは、収束する数列全体の集合が有界であることを示していきたいと思います。
aに収束する数列{an}について考えていきましょう。
数列anは仮定より収束するので、
an→a (n→∞)であり、
∀ε>0, ∃n0∈N [n≧n0⇒|an-a|<ε] (∵定義)です
εは任意の正の数なので次も成り立ちます。
∃n1∈N [n≧n1⇒|an-a|<1]
このとき、
an<a+1 (n≧n1)となりますね
ここでn1-1番目までの数列anの個数について考えてみて下さい。
n1がどれほど大きい数かは分かりませんが、何かしらの自然数であることに間違いありません。
つまり、数列anの1からn1-1番目までの個数は有限個なのです。
すなわち、数列anの1からn1-1番目までの値をすべて比べれば必ず最大のものと、最小のものが存在します。
無限個なければ値が無限に大きくなったりしませんよね^o^
以上のことから、n1-1番目までのanの最大値とa+1の両方よりも値の大きい実数が存在し、n1-1番目までのanの最小値とa+1の両方よりも値の小さい実数が存在します。
これはそれぞれ、数列{an}の上界と下界を意味してますよね。
だから、収束する数列は有界なのです。 ◾️
上に有界な増加数列は収束する
次に、上に有界な増加数列は収束することを示してみましょう。
{an}を上に有界な増加数列とします。
このとき実数の連続性から
集合{a1, a2, …an}には上限が存在します。
それをbとでもおきましょう。
任意の正の数εに対して、b-εは{an}の上界ではありません。
よって、b-ε<an0となるn0が存在します。
また、bは{an}の上界なので、
an≦b<b+εが成り立ちます。
以上のことから
b-ε<an0<an(n>n0)<b+ε
⇔|an-b|<ε (n≧n0)
(∵|an-a|<ε⇔a-ε<an<a+ε)
⇔an→b (n→∞) (収束する) ◾️
逆に、下に有界な減少数列も収束することもわかりますね。
極限の一意性
数列{an}について考える
an→a (n→∞)
an→b (n→∞)
となるa<bがあるとする
つまり、数列{an}がaにもbにも収束するとする。
このとき、次のことが定義からわかる。
- ∀ε1>0, ∃n1∈N[n≧n1⇒|an-a|<ε1]
- ∀ε2>0, ∃n2∈N[n≧n2⇒|an-b|<ε2]
ここで、さらに次のことも成り立つ。
- ∃n1'∈N
[n≧n1'⇒|an-a|<{(a+b)/2}-a=(b-a)/2] - ∃n2'∈N
[n≧n2'⇒|an-b|<b-{(a+b)/2}=(b-a)/2]
(a+b)/2はaとbの中点です。
また、(b-a)/2はa,bそれぞれからの中点までの距離です。
ここで、n0≧n1’かつn0≧n2’となるn0について考えてみましょう。
1の式から
an0<(a+b)/2が成り立ちます。
2の式から
an0>(a+b)/2が成り立ちます。
2式をまとめると
an0<(a+b)/2<an0
となり、式に矛盾が生じます。
つまり、数列{an}は2つの異なる数には収束せず、極限には一意性があります。
(∵背理法) ◾️
今回の話はどうだったでしょうか?
極限に有界に、今までやったことをわかっていないと難しかったと思います。
今回示したことは、直感的にわかるところもあり、わざわざ示さなくてもよかったかもしれません。
ただ、数学的に上のことが正しいといえることも大事なんだ、と思っていて下さい。今後もこういった直感的にわかるようなことも数学的に示していきますので、頑張っていきましょう。