kaninome’s diary

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コーシー列

 こんにちは!蟹の目です。
これまで数列や関数の極限についていろいろ書いてきましたが、今回はコーシー列というものについて紹介したいと思います。
このコーシー列は極限を議論することについて結構便利なものになっていますので、ぜひ覚えてもらえたらと思います。

 

今回の話題

  1. 収束する数列はコーシー列
  2. 区間縮小法
  3. ボルツァーノワイエルシュトラスの定理
  4. コーシー列は収束する
  5. コーシー列に関する問題

 

 

 

 そもそもコーシー列とはなんでしょうか?
|am-an|→0 (n,m→∞)を満たす数列{an}をコーシー列といいます。
(n'[n,m≧n'⇒|am-an|<εなどと書く場合もあります)
nとmを限りなく大きくしたときに数列のn番目とm番目の差が0に限りなく近づくような数列というわけです。

 なぜこのコーシー列が便利かというと、数列がコーシー列であるとき、極限値がわからなくても数列が収束することがわかるのです。
 (ε-N論法では極限値が式に入っていますね)
 収束する数列⇔コーシー列を示していきたいと思います。

1. 収束する数列はコーシー列

 前置きが長くなりましたが実際に示していきます。

aに収束する数列{an}について考えます
定義からε>0, n0∈N[n≧n0⇒|an-a|<ε/2]です

 n,m≧n0のとき
|am-an|=|(am-a)+(a-an)|
     ≦|am-a|+|an-a| (∵三角不等式)
     <ε/2+ε/2=ε
よって収束する数列はコーシー列です ◾️

 

 

 

2. 区間縮小法

 さっさとコーシー列なら収束することを示したいのですが、それを示すためにいくつか別のものを示す必要があります。まずはそのうちの1つ、区間縮小法を示したいと思います。

 区間縮小法とは
有界区間I1⊇I2⊇…In⊇In+1⊇…となるとき
すべての区間に共通して含まれる実数が存在し、
In=[an,bn]とすると(bn-an)→0 (n→∞)⇒共通部分が1つの実数に決まる
ことです。

 実際に示していきたいところですが、実は以前解いた問題で示しています。

極限のまとめ(問題2) - kaninome’s diary
こちらの2問目で示しているのが区間縮小法になります。

 

 

 

3. ボルツァーノワイエルシュトラスの定理

 次は名前の長いボルツァーノワイエルシュトラスの定理について示したいと思います
この定理は、有界な数列{an}は収束する部分列{bn}が存在することです。

 この定理の証明に区間縮小法を用います。
まず、有界区間I0∋anとなる数列{an}について考えます
I0=[a0',b0']とする
このI0を半分に分け、数列の項が無限に存在する方区間をI1とする。
 (数列は項が無限個存在するため、半分に分けた少なくとも一方には項が無限個放っている。)
I0⊇I1=[a1',b1']であるとする
I1をさらに半分に分け、数列の項が無限個存在する方をI2とし、
I2=[a2',b2']とする

この操作をn回繰り返したときの区間をInとすると
I0⊇I1⊇I2⊇…⊇In=[an',bn']であるとする
このとき、区間縮小法から分かる通り、
数列{an'}は単調増加、数列{bn'}は単調減少数列になり、それぞれある実数αに収束する
またa0'≦a1'≦a2'≦…≦an'≦α≦bn'≦…≦b2'≦b1'≦b0'である

 ここで区間から数列の項を1つずつとっていく
(I1∋an1,I2∋an2,…,In∋ann,…)
an1≦an2≦…≦ann≦…≦αとなる数列{an}の部分列{ank}が存在する
この部分列{ank}は上に有界な増加数列であるから収束する

以上より、元の命題有界な数列{an}は収束する部分列{bn}が存在するが示せた ◾️

 

 

 

4. コーシー列は収束する

 上で長々と定理を示してきましたが、全てはコーシー列が収束することを示すのに必要な道具になります。それでは実際に示していきましょう。

 コーシー列である数列{an}について考える
n'[n,m≧n'⇒|am-an|<ε/2 ]であるから
-ε/2+am<an<ε/2+amであり、
M=max{a1,a2,…,an'-1,an'+ε/2}
m=min{a1,a2,…,an'-1,an'-ε/2}とおくと
m≦an≦Mとなり、数列{an}が有界であることがわかる

 ここでボルツァーノワイエルシュトラスの定理から
数列{an}には収束する部分列{ank}が存在する

 ank→α (nn→∞)とすると
ε>0 nn0[nk≧nn0⇒|ank-α|<ε/2である

 n→∞ (nk→∞)のとき
|an-α|=|(an-ank)+(ank-α)|
    ≦|an-ank|+|ank-α| 
    <ε/2+ε/2=ε  (∵コーシー列であることと部分列の収束)

これは数列{an}が収束することを示す ◾️

 これで収束する数列⇔コーシー列が示せましたね
これが実数範囲で常に成り立つことを実数の完備性といいます
(実数の完備性は実数の連続性としてこれまでも扱ってました
詳しくは別の機会に…)

 

 

 

5. 問題

 最後にコーシー列に関する問題を1つ紹介したいと思います。

数列{an}に対して定数c(0<c<1)が存在して
すべてのnで|an+2-an+1|≦c|an+1-an|
が成り立つなら数列{an}は収束することを示せ

 すべてのnに対して不等式は成り立つので
|ak+1-ak|≦ck-1|a2-a1|
cn→0 (n→∞)であるから
0≦|ak+1-ak|≦ck-1|a2-a1|→0
このことから数列{an}がコーシー列であることがわかる

 よって与えられた数列{an}は収束する ◾️

 

 

 コーシー列についてわかったでしょうか?
これにて極限の範囲を終了したいと思います。
次回から微分の範囲に入りますのでそっちも頑張りましょう。
(極限の範囲も随時質問等受け付けてますのでよろしければ…)

また次回!!!